雪の女王、バオバブブログ


#11「赤い靴」


カーレンは沙苗ちゃんでした。前回の予告を見て美しいけど冷たそうな表情に、
沙苗ちゃんの声は合いそうだなあと思っていたら、実際にそうでちょっと驚いた。
いずれは出てくるのだろう原作の山賊の娘も沙苗ちゃんの声なら面白そうだなあ
とも思ってたんだけど。
アンデルセンの「赤いくつ」は堅信礼とか聖餐式とかいった教会の大切な儀式を
おろそかにした罰と改心、そして救いという話だけど、このアニメでは
キリスト教の要素をきれいに取り除いて、「人として」という普遍なテーマに
置き換えていた。このアニメのこれまでの話の中でも一番よく出来ていたと思う。


カーレンは貧乏を憎むあまり、貧乏とは無縁の世界の象徴としての赤い靴に
憧れていただけだった。
「一生に一度でいい…」
本当にただそれだけの、むしろ純朴な娘だったんだろう。
それが、働きづめで死んだお祖母さんと皮肉なことに純粋一途なゲルダ
来訪によって、ついにキレてしまう。
原作の女王の姫のかわりに夏樹リオさんがあててた上流の娘によって
赤い靴と上流社会を結びつけるところも自然なストーリーだった。
しかし、心の底ではお祖母さんも父親も愛していたカーレンの
幼さゆえと言ってもいいような過ちへの報いが、本人だけでなく、
父親にまで及ぶのはちょっと厳しすぎる気もする。
カーレンが人として外れていたのは確かだけど、赤い靴に憧れること
までも悪いことなんだろうか?
後日談では、それまでとは一転して髪を切り貧しい服で懸命に働く
カーレンの輝く顔は、その憧れまでも否定しているように見える。
実際、カーレンが憧れて眺めたあの店のウィンドウには、もう赤い靴はない。
結末には疑問も感じるけど、面白かった。
今回はゲルダがほぼ傍観者だったのも、カーレンの物語を際立たせるには
良かった。町を去っていくゲルダの妙に明るい表情に救いを持たせる
描き方も上手かったと思う。
冒頭の夢みるような心ここにあらずのセリフから、クライマックスへ向けて
激情を高めていく沙苗ちゃんのセリフがたっぷり聞けた。
カーレンの悲しい物語を余すところなく語っていた。
あと、結局は金持ちの気まぐれに過ぎなかったドライな伯爵夫人をあててた
高島雅羅さんの品と貫禄が素敵だった。
ところで、ちょっとびっくりしたのは、「赤いくつ」でグーグル検索したら
「赤いくつのカーレン」のファンサイトが存在していること。有名?
世の中、すごいなあ。






☆「バオバブ デスクのつぶやき」7/31。サクラとガラスで。


紫のバラを持って。むしろ差し出しているように見えるけど?