ガラスの仮面


□#36「冬の星座」見守る速水



絵も演出も声も良かった。
マヤの表情がやや平凡だけど可愛らしく描けていた。それに比べてラスト近くの
アルディスとしてのメーキャップをしたマヤは別人のように舞台映えしそうな
華やかな表情に見えた。
倉庫での月影先生とマヤと亜弓の練習では、倉庫の窓の光が昼間から夕方へと
移って長時間続いたことがわかった。このあたりは前に「たけくらべ」の特訓で
小屋に閉じ込められた場面を思わせる。
亜弓のオリゲルドが「鳥が好き」だというところのカメラワークもオリゲルドの
心の中に映る鳥が見えるような気がした。
冷凍庫に閉じ込められた亜弓の硬く凍ったセリフ、出てきたマヤの暖かく融けていく
セリフ、どちらも良かった。
亜弓のセリフではだんだんアップになるカットがセリフの迫力に合っていて、
マヤのセリフではピアスだかイヤリングだかがきらっと光る絵も暖かさを
感じさせてくれた。
そして地下鉄の入り口でマヤと亜弓が素で話すところは、この劇の練習を通して
二人の距離が近くなった雰囲気が感じられるシーンだった。
サブタイトルから季節は冬に入ったんだろうけど、この地下鉄入り口からの
シーン転回は暗転ではなく間に冬の夜空の星座を見せても良かったんじゃないかな。
銀座でもオリオン座くらいは微かにわかるんじゃないだろうか。
声では今回のゲスト、北白川を演じた弘中くみ子さんが良かった。
品のある声で歌も上手で、弘中さんのミュージカルやボイスパフォーマンスを
やってきた経歴からもぴったりの役だった。81は層が厚いなあ。
Bパートの1週間後の稽古場での月影先生による試験の場面は、演出家や他の
出演者の呆然と見守る表情から二人の芝居に引き込まれている様がわかって、
つまらない感嘆の説明セリフが入らないのは良かった。絵と声で見せてくれた。
今回の速水はマヤに紫のバラの人と明かさずに、かつてアルディスを演じた北白川を
マヤに引き合わせて嬉しそうに哄笑するシーンは、子供っぽくて可愛い。
無邪気ないいヤツ。何も言わずにマヤを見守る速水。まるで夜空の星座のように。
ただ役作りで物乞いをする亜弓を取り囲む少女3人組のシーンはいつの時代の
話なんでしょう?ここも原作通り?そこまで原作に沿わなくてもいいのに。