ガラスの仮面


溜まってた「ガラスの仮面」の感想。



#13「あした草」気高き月影の人


前半は小さなアパートに身を寄せた劇団月影の面々の日常話。
他の事をすべて振り捨てて演劇に賭ける月影先生の気高さ、マヤたちの情熱、
源造の無償の愛が感動的に語られている。
マヤたち5人の服のカラーは、麗が青、美奈がオレンジ、泰子が緑、さやかが水色、
そしてマヤが黄色。萌えアニメなら一人はいそうなピンクがいないんですね。
深夜に一人星空を見上げる月影先生。孤高の天才は演劇のこととなると
容赦はないが、その心は純粋そのもの。
本当は、月影先生と劇作家尾崎のエピソードも見たいんだけど。


一方、オンディーヌ側には速水の冷徹な事業家の仮面の下の素顔に気付く、
切れ者の秘書水城冴子登場。佐久間レイさんの声はぴったり。
後半は、端役の役作りに懸命なマヤを見て何かを感じるアイドル田淵エミちゃんの
ほんの少しの変化が丁寧に描かれている。
マヤも亜弓の舞台シーンもなかったけど、未奈が家庭教師をする子供の反応のテンポや
桜小路くんとマヤの川原のシーン、マヤのオーディションシーンでのアップの使い方、
マヤの報告に脱力する4人の間とか、麗と速水の肩越しのマヤのアップなど、
確かな演出で見応えのある回だった。
舞台上のコーデリア役の生天目仁美さん、田淵エミ役の榎本温子さんのアイドルらしい
演技も良かった。
それにしても、いくら狭いアパートでも体を伸ばして寝ないと疲れが取れないと
思うんだけど。泰子なんかうずくまって寝てるし。
マヤの「ベー」が可愛かった。





#14「宿命のライバル」報われない愛が美を際立たせる


マヤと亜弓の芝居への情熱が周囲の者を圧倒する。
マヤはアイドル田淵エミや映画のスタッフ、演劇部の部長を、
亜弓は人気女優の母、オンディーヌの劇団員を。
二人それぞれの世界で成長を続ける様と、「紅天女」の上演権をめぐる
やり取りが平行して描かれていく。いくつもの縦糸が絡みながら
同時に進行していくところは、大河ロマンの名に恥じない作り。
偉大な原作であることは間違いないですね。
袖を縫い合わせて勝生真沙子さんの先生に叱られたり、泥んこになる
あたりは、やや取ってつけた印象。
今回のゲストでは、生天目さんは奏会長よりもこちらの部長のほうが
面白かった。あちこちの劇団員で出てきた榎本さんも、「ガラスの仮面
の世界に溶け込んでいるのはさすが。
沙苗ちゃんも「紫のバラの人」のメッセージを読みながら涙声に
なっていく場面は、聞かせてくれた。


小野寺の陰謀すら自分の罪と見なされてマヤの憎しみを一身に受ける速水。
「紫のバラの人」としては、これだけマヤに強く意識してもらっていて
ファン冥利に尽きるだろうけど。もっとも、まったく報われないが。
それでもファンであり続けるのは、マヤの演技に魅せられてしまった
からなんだろう。きっと何か魔性のようなものがあるに違いない。
桜小路くんは素顔のマヤに惹かれているが、速水は女優としての
マヤの虜になっている。
マヤと出会う以前の大都芸能の速水からすると、これは転落といっても
いいのかも知れない。
報われない愛情に生きるところが速水を絶世の美形に押し上げている。


新ED曲「Step One」も印象的なイントロがいい。
これなら本編のラストに被せても良さそう。





#15「罠」妙に色っぽいマヤ


冒頭の逡巡から思い切って劇場廻りを始めるマヤ、原田のテストを受けるマヤの動き、
倒れた椅子に座るところでの手と足の動き、アップとロングの切り替えのテンポ、
亜弓の舞台の冒頭など、細かな描き方で正攻法で見せていた。物語が映える。
思わぬところでマヤの評判を聞きライバル心を燃やす亜弓。
思いがけず亜弓の体当たりの役作りに遭遇して衝撃を受けるマヤ。
ライバル物のツボをついてくる。
マヤの資質を一目で見抜く一流の女優原田菊子を小宮和枝さんが貫禄を見せて
あてていた。
その原田の評価を聞いてほくそえむ速水。ファンの密やかな愉悦。


「王子と少年」で二役をあてる矢島晶子さん。このへんは第一人者の確かさ。
矢島さんの少年役だと「スターウォーズ」や「ホームアローン」もいいけど、
去年再放送もされたBBCの「小公子」が一番好き。演じていた俳優と一体となって
本当に最高だった。
対比的に描かれたマヤの子守も、沙苗ちゃんの訛りが楽しかった。
亜弓は急速に大人の女優へと脱皮していき、
無名のマヤは一流の演劇人によって密かに注目を集めていく。盛り上がってきた。


今回の夏服のマヤが可愛らしかった。
マヤの絵は子守姿も妙に色気があった。





#16「舞台あらし」希薄な家族


季節は銀杏が色づく秋へと移っても、マヤは相変わらず桜小路くんと
いい雰囲気。しかし横浜では、いつか血を吐くようになっている母親。
近づく冬の予感。
いかに勘当同然とはいえ、さすがにマヤは親不孝。
マヤに限らず原作「ガラスの仮面」に「家族」という視点はかなり希薄
に感じる。
劇団月影に入る以前のマヤの「不幸」が家族に起因していそうなのに、
その「不幸」にもう一つ説得力がないように感じられるのは時代の違い
だけでなく、マヤに対比される「幸せな家族」が描かれていないことにも
あるように思う。
マヤ母子が身を寄せていた杉子の一家はおそらく幸せな家族だったんだろうが、
ただマヤ母子の不遇のためのシチュエーションとしてしか描かれていなかった。
唯一描かれている幸せそうな家族が、演技のことで火花を散らす
亜弓の一家だけだし。
マヤと母との関係も過去に遡って説明されることはなく、
マヤにとっての母は演劇の障害としてしか描かれていない。


マヤは幼稚園での芝居サークルを手伝いながら、そんな小さな舞台でも
嫉妬され疎まれる。その宿命をいち早く見抜いた原田菊子と月影先生
会話は、小宮和枝さんと藤田淑子さんの重厚な演技がさすが。
女優夏江梨子と園長に小林優子さん、カズくんに間宮くるみさん。
豊富な81の女優陣がこれからも次々に出てくるんだろうなあ。
オーディションのライバル役に松岡由貴さん。相手役に浪川大輔さん。
幼稚園の先生も松岡さんだったのかな?
豪華なゲスト声優も毎回楽しみ。
今回は、「舞台あらし」のセリフに合わせてページがめくれる本や
嵐が丘に生えるヒースの上に吹くような強風にさらされる木の影、
稽古場の扉を開けるマヤとか、けれん味のある演出だった。
役を掴んだマヤに吹き付けた突風は笑っちゃったけど。